《そう。よかったわね》
《2歳の小僧にしちゃあ、たいしたものだぜ。》
キトがそっけないので、俺はフォローしてやった
《犬の1年は、人間の7年に相当するんだったかしら。コタローも14歳なら、自立できる歳じゃない。あたしがそばにいない方がよかったのよ》
《だからって、突然いなくなることないじゃないですか!》
コタローはいくぶん非難めいた調子で言った。
《あんたに声をかけたら、着いてきちゃうと思ったのさ。あの人はネコ好きだけど、犬はダメだったからね》
《あの人って、ピンクのスーツケースを引きずるように歩いていたあの女の人ですか》
《そうよ。あたしはどうしても、あの人に着いていかなきゃいけなかったの?》
《その女というのは雪乃のことかい?》
《そう》
《どうして、その女の人に着いていく必要があったのですか?》
《あたしたちの能力を高めるためには、ある特定の人間が必要なの》
《ある特定の人間?》
キトの意味するところが分からず、俺は聞き返した。
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