2013年4月7日日曜日

俺の名は勘九郎(106)


「今日の入荷予定です」
「もし、肉厚が足りなかったらどうするんですか?」
「国内の問屋から同じ規格のパイプを取り寄せます」
「確保してあるんですか?」
「16本手配しました」
「静岡のは、どれくらいダメだったんですか?」
「2割です。Fプロは130基もありますから、2割だとアウトです」
「2割だと26本…」
つぶやくように言う山崎を見て、尾藤は苦しそうに首をふった。
「ブラジルから来るのは、6mものが200本です。Fプロは、9mですから」
6mのパイプと3mのパイプを接続して、9mの高さにすることを山崎は思い出した。200本のパイプのうち、65本を半分に切断して3mのパイプをつくるのだ。130本は6mのまま使うので、5本余ることになる。予備のパイプがあるとことに、山崎は一瞬安堵したが、200本のうち2割が使えないとしたら、40本も不良品があることになってしまう。山崎は計算しながら、絶望的な気持ちになった。
「国内にはもうないんですか?」
「北海道から九州の問屋まで、ほとんどすべて当たりました。連絡できてない業者が少しだけありますが、まず無理でしょう。通常の規格と違うパイプですから」
「韓国とかにはないんですか?」
「あるかもしれませんが、購買や通関の手続きをしていたら、とても間に合いません」
「パイプがつくまで、待ってていいですか?」
山崎が尋ねると、尾藤はまた苦しそうな顔をした。
「パイプが入ってきても、すぐには検査できないんです」
山崎は不審な顔になった。
「今は、全員を静岡のポールに張り付けています。普段は検査をやってる連中も、今は組み立てや溶接をやっています。ほとんどの人間が、二晩も寝ていないんですよ」
「そんな…」
と言った山崎は、それきり口をつぐんだ。承認図を忘れたことを思い出し、何も言えなくなったのだ。


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