2012年8月19日日曜日

俺の名は勘九郎(92)

《これは失礼しました。だが、あいにく、俺のしゃべり方は誰に対してもこうでね。お前が王様ライオンの息子だとしても同じさ》
《カラスの一族というのは、みなさん、そうなのですか!》
《まあ、そんなに突っかからないでくれよ。これは単に俺流だ。それにしても仔犬のうちからマタげるなんて、たいしたものじゃないか》
《ずいぶんと上から目線ですね。カラスが犬より偉いかのようです》
《その考え方は間違っているぜ。カラスと犬のどちらかが偉いなんてことはない。人間だって、草花だって、どの生きものだから偉いなんてことはないんだ。それに俺は、自分が偉いなんて思ったこともない。たまにしかな》
《共感しそうになって、損しました。それとも、てれ隠しですか》
《どっちでもいいさ。それにしても、しっかりしてるな。まだ子供だろ》
《独りで生きてると、いろいろ覚えなきゃいけないんです》
《飼い犬じゃなさそうだが、親もいないのか?》
《どこで生まれたのかは知りません。人間に飼われていたことはあります。シェットランドシープドッグだと思われていたうちは良かったのですが、血統証に偽りがあったとかで、1歳になる前に捨てられました》
《ふん、血統にしか興味のない最悪の人間だな》
《外にでたおかげで強くなれました。いっぱい勉強もしました》
《マタギも独りで覚えたのかい?》
《キトさんから教えてもらいました。キトさんというのは、この公園で知り合った猫です》
《キト?キジトラ模様のメス猫かい?》
《キトさんを知っているのですか?ぼくはもう、何カ月も会っていません。キトさんに、ぼくの成長を見てもらいたいなあ。でも、この公園には来なくなってしまいました》
《彼女なら俺のウチにいるぜ》



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