2013年11月23日土曜日

俺の名は勘九郎(115)


事務室に戻ると、溶接の作業を終えた船越が、ちょうど上がってきたところだった。
「どうだった?」
「1本足りなくなりました」
山崎は無念を隠すことが出来なかった。
「まだ調べていない問屋って、どれくらいあるか知ってますか?」
「尾藤さんがやってたからなあ。どっかに書いてあると思うけど」
「尾藤さん、大丈夫ですかねえ?」
その時、船越の尻の辺りでニュース速報を知らせるときの様な音がした。ポケットから携帯を取り出し、画面を開いたい船越は
「あれ、尾藤さんからだよ。こんな時間に起きてんなっつうの」
と言って、本文を読みだした。
「2本、手配してあるってさ」
「えっ?」
「残りの問屋を調べて、2本だけ見つかったから、すぐに頼んだとさ」
そう言って、船越は返信を打ち始めた。
“ダメパイプは、全部で21本でした。静岡の方もケリがつきました。尾藤さんも安心してゆっくり休んで下さい。明日、会社に来ちゃ駄目ですよ”
メールを送り、携帯を閉じた船越は「命懸けでやんのはいいけど、ほんとに死んだら意味ねえって」とぽつりと言った。


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