2010年2月3日水曜日

俺の名は勘九郎(21)

「ダメかあ。でも最初に、九官鳥に言葉を教えた人だって、きっと、苦労したんだろうな。お・は・よ・う」
《アホウ。人間が言葉を教えようとしたのが先じゃない。人間の言葉をモノマネした九官鳥がいただけのことだ》
「おー、一生懸命しゃべろうとしてんじゃん。やっぱこいつ天才カラスだな」
それは正しい。
部屋に戻った山崎は、冷蔵庫から何かを取り出すと、再びベランダにやってきた。厚揚げをちぎって、むき出しのコンクリートに二切れ置おくと、また余計なことを言った。
「トンビにあぶらげ、カラスに厚揚げってか」
《バカ》
しかし、悲しいことに、好物だった。
「ちゃんと返事してから食うとこが偉いな、こいつ」
手に持っていた残りの厚揚げをプラスチックの袋からだして俺の足元に置くと、山崎は、待ってろよ、と言って部屋に戻り、ジーパンとTシャツに着替えて玄関から出ていった。


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