2011年12月17日土曜日

俺の名は勘九郎(79)

「『倹約と変革』が鷹山の改革なんだ。それがうちの社訓にもなっているくらいでね」
「そう言えば『お客様は神様だが、王様ではない』と書いた張り紙がありましたけど、あれも社訓なんですか」
職場の壁に貼ってあったという紙に山崎は気づかなかったが、野々村が尋ねた。
「気づいたかい。あれは先代の社長の言葉でね。浅野さんの人は違うけど、下請けイジメを生きがいにしているような人も結構いるから。先代は、お客様をとても大切にする人だったんだ。けど、下請けをバカにする客がいたら、そんな人を王様のように扱う必要はないって言ってたよ」
「神様ではあるんですか?」
「試練を与えて下さるからね」
「面白い考え方ですね」
「うちの会社じゃないけど、世の中には、元請け企業のことを『代理店さん』って呼んでる会社もあるそうだよ」
「代理店さん?」
「そう。自社商品の販売窓口になってくれる代理店さんと思えば、無理なことを言われても、上から目線でいられるんだとさ」
「へえー、俺もこっそりそう思うことにしよ。これだけでも、研修に来た甲斐があります」
山崎は、ちゃめっけのある目をして笑った。


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