2011年12月3日土曜日

俺の名は勘九郎(78)

「専務なんて呼ぶ人はいないよ。社長と社員の間にいるただの工場長さ。尾藤さんと呼んでくれればいい」
尾藤さん、と呼び直した野々村は、ヨウザンの売上高や売上高に占める浅野ソーラーの割合などを聞いた。こいつは、やっぱり経理っぽいな、と思った山崎は、
「ところで、なんでヨウザンってゆう名前なんですか?」
と素朴な疑問を口にした。
「溶接で山も作ってしまう会社、って意味もあるんだけど、本当の由来は、上杉鷹山から来てるんだ」
「上杉ヨウザン? 謙信の子供か誰かっすか?」
「なんだ、大学を出た学士様のくせして、上杉鷹山もしらないのか」
尾藤の目は、山崎から隣の野々村に移っていったが、野々村も照れくさそうに下を向いた。
「全然しりません」
と山崎は元気よく答える。
「最近の若いのは、日本史なんか勉強しないのかね、なんてな。俺だってこの会社に来るまでは、鷹山なんて知らなかったよ。米沢藩の藩主に、上杉鷹山っていう偉い殿さまがいたんだ」
「えっ。上杉って、越後とか新潟とかあっちの方じゃないんすか?」
山崎は、更なる無知を露わにした。
「関ヶ原のあと、いろいろあって、上杉家は米沢に行ったんだな。そこの9代目に鷹山が現れて、藩政を改革したんだよ」
「詳しいですね」
野々村が言うと、社長に聞かされてるから、と答えて尾藤は続けた。


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