2012年6月24日日曜日

俺の名は勘九郎(90)

「今回の件はね、俺も悪いんだよ。プロが一度引き受けたら、責任を持たなきゃいけないんだ。山崎さんを悪者にして、一週間納期を遅らせてくれ、なんて言うのはアマチュアのやることですよ」
きょとんとする山崎を見ながら、尾藤が続けた。
「このところ、だいぶ忙しくってね。永野さんに送った図面が帰ってきてないことに、一度は気づいたんです。承認図が戻ってこなければ、督促して返してもらわなきゃいけないんですよ。『お客さんが返してくれないから仕方がない。その分、納期を遅らせてもらおう』なんて発想じゃ、プロとは言えませんよ」
《やっぱ、尾藤さんはすげえや》
山崎はそう思ったが、口では別なことを言った。
「そう言って頂くと本当に助かりますが、私にできることがあったら、なんでも手伝わせて下さい」
「人手が足りなくなったら、応援にきてもうらおうか」
朗らかに笑いながら尾藤は言った。しかし、やがて本当に山崎の手まで借りる事態になるとは、思いもよらなかった。


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