2012年10月27日土曜日

俺の名は勘九郎(97)


《何か気になることでもあるのかい?》
《勘九郎さんの感知力ってすごいんですね。ぼくは今、なるべく不安な気持ちが出ないように気をつけて、念を送ったつもりだったのですけど》
《感情のコントロールは難しいのさ。俺だって、不安や怒りを殺しながらしゃべるのは大変だよ》
《毅然と生きるには、心の制御が大切なのでしょうね。堀田さんは強い人ですが、思ったことがそのまま行動に表れてしまう人です》
《そんなタイプだな。俺も何度か、堀田が激昂するのを見たよ。堀田は、ホームレスを支援するNPOの設立に邁進している頃だと思っていたのだが》
《はい、それもやってますけど、ある人に復讐しようとしています。サラリーマン時代の恨みを晴らすそうです》
《上野のことだな。堀田がいた会社の親会社の社長さ。どうやって復讐してやろうというんだい?》
《市民団体の力を利用しようとしているみたいです》
《市民団体?》
《表向きは、消費者を守る市民運動家が集まるNPO法人として活動してますが、実態はかなり過激な組織のようです》
《ミイラ取りがミイラにならなきゃいいがな》
《えっ?》
《団体の力を利用しようとしている堀田が、その団体に染まってしまわなきゃいいってことさ》
《ああ…。その危険はあると思います。堀田さん自身、その団体と関わりあうのは、復讐が済んだら終わりにするつもりみたですけど》
《団体の名前は?》
《「名前のない市民団」》
《名前のない市民団…か。薄気味の悪い名前だな。それとも正義の味方は、問われても名乗らないのかな》
《市民団の人たちは、自分たちの活動を正義の執行だと思っているようです。堀田さんも、彼らの主義や主張が正論であることは分かっているのですが、初めは強い違和感を持っていました。けれど、最近は「違う」という感覚が薄れ始めています。ぼくの不安は、それと反比例するように強くなってきました》
《正義の執行者…。ますますもって近づきたくないタイプだね。その団体と堀田は、どう関係しているんだい?》



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