2010年5月20日木曜日

俺の名は勘九郎(31)

《だったら、埃をかぶせておくな。浅野の恨みを晴らそうとしているハンの気持ちが分からないのか》
通じていないことは分かっているが、言わずにはいられなかった。
「そう怒るなよ。今度、パチンコ玉でも持ってきてやるからさ」
山崎を相手にしていると、俺の念を送る力が足りないのかと不安になる。しかしハンが4カ月念じ続けて、何も感じなかった男だ。非が山崎にあることは間違いない。
鳥かごの窓を持ち上げて、山崎は言った。
「ハウス!」
《バカ》
わざと鳴き声を聞かせてから、鳥かごに入ってやった。
「うわーお。英語を理解して鳥かごに戻るカラス。これ、ビデオにとって、テレビに送ろう」
《せめて、テレビ局と言え》
「ホントに、お前って言葉が分かってるよね。テレビ出たら、厚揚げ3袋な」
そいつには、ちょっと弱い。

《ありがとうございました。これで、明日からは外の世界に出られそうです》
ポテトチップスを食べながら、バラエティー番組にバカ笑いする山崎をしり目に、ハンが声をかけてきた。
《いつも、いろんな話を聞かせてもらっているお礼さ》
声を出さずに、俺は答えた。
《なぜ私が上野を恨んでいるのか、詳しい話をしてもいいですか?》


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