2010年1月3日日曜日

俺の名は勘九郎(15)

発注仕様書に「照度保証」の文言が入っても、浅野はウィンディーサニーの価格を吊り上げるようなことはしなかった。製造コストにわずかばかりの利益を乗せて入札金額とした。売上金額の堅調な伸びと比例して会社の利益も増えたが、浅野は大きな利益を上げることをよしとしなかった。どれだけ売上が伸びても、会社の経常利益率は3%程度で一定していた。
「我が社は、もっと利益を重視すべきです」
浅野に面と向かってそう主張したのは、古参のひとりである田中貞義だった。浅野ソーラー3人目の社員として入社した田中は、技術部長を兼務する専務取締役になっていた。財務基盤を強化したい蔵島は、本心では田中と同じ意見だった。しかし、浅野がなんと答えるかは、聞かなくても分かっている。
「独占的な立場を利用して、税金泥棒のようなことをするつもりはない。役所がうちに有利な仕様書を作ってくれるのは、浅野ソーラーの経営姿勢を高く評価してくれているからだ」
予想通りの答えだが、蔵島はそれもまた真なり、と納得している。しかし、田中の内心はそうではなかった。


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