2010年1月14日木曜日

俺の名は勘九郎(17)

この前の無差別テロといのうは、公園のベンチや木陰にあった弁当の残り物を食べたネコやカラスが死んでしまった事件のことだ。キトさんが教えてくれたそのニュースによると、弁当に毒物を混ぜた人間がいるらしい。無差別テロ事件として広まったそのニュースは、公園中の動物たちを震撼させた。だから、キトさんのように、心が読める仲間の様子をみてからじゃなきゃ、人間から食べ物をもらうことができなくなった。
どうしてキトさんは、ピンクのスーツケースの人について行ってしまったのだろう。
年老いたシュロの木の根元にできた窪みがぼくの家だ。キトさんが、あの女の人と一緒に公園を出たのと入れ替わるようにその男の人は、ぼくの家の隣に越してきた。夏の暑さの残る、からりと晴れた日の夕方のことで、その人は、紺のスーツの背中にに黒い大きなバックパックを背負っていた。
「この辺にするか」
何枚かの大きな段ボールをシュロの木に立てかけると、その人はズボンのポケットからタオル地のハンカチを取り出して、額の汗を拭った。


「続きが楽しみ」と思ったら押して下さい。

0 件のコメント:

コメントを投稿