2010年1月15日金曜日

俺の名は勘九郎(18)

草の上に転がしたバックパックから、プラスチックのハンガーを取り出して、シュロの木の枝にそれをぶら下げた。その人は、脱いだ上着を丁寧に畳んで、バックパックの上に乗せた。それからネクタイを外し、ワイシャツとズボンを脱いだ。靴を脱いだその人は、片足ケンケンで靴下も脱ごうとしたが、そこで動作を止めて、シルクソックスの足を、そのまま革靴に戻した。茶色の革靴にスケスケの靴下、白のランニングシャツにボクサーパンツという格好で、その人はカバンの上の服をハンガーにかけた。
彼は、着ていたもの一式をシュロの木にぶら下げると、たわんだ枝からハンガーが落ちないことを確認した。バックパックからオレンジ色のTシャツを出して、ランニングを脱ぐと、6枚に割れた腹筋が現れた。パンツ一丁に白いランニングシャツでは、中年のおじさんだったが、サイの横顔が大きく描かれたTシャツとジャージのズボンに着替えると、ずいぶんと若くみえた。足首をマジックテープで固定するタイプのサンダルをはくと、やっとその人の着替えが終わり、ようやくぼくも落ちついた。


「続きが楽しみ」と思ったら押して下さい。

0 件のコメント:

コメントを投稿