「私のブログでケンカしないで。だいたい、授業中はカキコしない約束でしょ」と千葉が書いたのは、その日の夜のことだ。スージーにはムリと、猪俣が書いたのが、11:03で、30分後には川田が「決めつけないでよ」とコメントしていた。千葉だけが、自宅に帰るまで、そのページにアクセスしなかったのだ。
それを見た猪俣は、ルール違反を承知で千葉の携帯に電話をかけた。3人で集まることを提案したが、千葉は承服しなかった。千葉の社内で、談合が問題になりだしたというのだ。
九
俺はハンの能力に舌を巻いた。山崎の机から蔵島のポケットに移りたったの3ヶ月で、ハンはあらゆる物質の潜在的な記憶を探っていた。そうやって浅野が死んだ後のことを丹念に調べた。
ハンは過去の出来事もよく覚えていて、F市のプロジェクトというやつに山崎が入れ込んでいた理由についてもよく知っていた。その仕事に関しては、ずいぶんと山崎が熱心なことを俺は不思議に思っていたのだが、ハンの話を聞いて納得した。
F市のプロジェクトが再始動する、と山崎が聞いたのは、猪俣による談合が始まってしばらく経ってからのことだ。山崎は久しぶりに奮い立つ気持ちになった。その仕事は、山崎の情報がきっかけとなって、浅野ソーラーが食い込んだ案件で、建設予定のリゾートランドから市街地エリアまで、130基もの街路灯が整備されるビッグプロジェクトだった。
プロジェクトの計画が最初に持ち上がったのは、山崎が入社して3年目になる春のことだった。
「続きが楽しみ」と思ったら押して下さい。
2011年5月31日火曜日
2011年5月8日日曜日
俺の名は勘九郎(63)
F市が現場説明会を行ったのは9月10日のことで、朝夕に虫の音が聞こえ始めた頃だが、猛威をふるった夏の勢いが少しも衰えない夏の終わりのことだった。「現説」と呼ばれるその説明会に出席したのは山崎で、猪俣が入札仕様書に眼を通したのは翌日だった。
「うちの技術で対応できるのか?」
部長席の隣にある小さな会議テーブルの向かいに座る山崎に、猪俣が聞いた。
「問題ありません」
「技術に言って、すぐにコストをはじかせろ」
「昨日、頼みました。ですけど、やる意味あるのかって聞かれました」
談合で他社が取ることに決まっているのなら、技術部としては余計な手間をかけたくないのだ。
「黙ってやらせろ」
山崎は素直にうなずいた。談合の仕組みを知らない山崎は、浅野ソーラーが仕事をとる順番なのだと理解してほっとした。そのプロジェクトは山崎にとっても思い入れの深い仕事だったからだ。
猪俣はすぐにデスクトップのキーボードを叩き、ミカりん日記を開いた。最新投稿を見ると、タイトルには「自由行動」とあって、コメントには「次の日曜日は、自由行動にしよう!」と書かれていた。日曜日とは「入札」を示す隠語で、千葉は、その案件を談合の対象から外そうと提案しているのだ。しかし、そのすぐ下にスージーのコメントがあり「私は予定通りがいいな。それが友情じゃない?」と書かれていた。猪俣はコメントの時間が記録されてしまうことを少しためらったが、「私は、ミカリンに賛成。スージーにはムリだと思う」と書いた。すると今度は「勝手に決めつけないでよ」と、川田がすぐに書き込んだ。
「続きが楽しみ」と思ったら押して下さい。
「うちの技術で対応できるのか?」
部長席の隣にある小さな会議テーブルの向かいに座る山崎に、猪俣が聞いた。
「問題ありません」
「技術に言って、すぐにコストをはじかせろ」
「昨日、頼みました。ですけど、やる意味あるのかって聞かれました」
談合で他社が取ることに決まっているのなら、技術部としては余計な手間をかけたくないのだ。
「黙ってやらせろ」
山崎は素直にうなずいた。談合の仕組みを知らない山崎は、浅野ソーラーが仕事をとる順番なのだと理解してほっとした。そのプロジェクトは山崎にとっても思い入れの深い仕事だったからだ。
猪俣はすぐにデスクトップのキーボードを叩き、ミカりん日記を開いた。最新投稿を見ると、タイトルには「自由行動」とあって、コメントには「次の日曜日は、自由行動にしよう!」と書かれていた。日曜日とは「入札」を示す隠語で、千葉は、その案件を談合の対象から外そうと提案しているのだ。しかし、そのすぐ下にスージーのコメントがあり「私は予定通りがいいな。それが友情じゃない?」と書かれていた。猪俣はコメントの時間が記録されてしまうことを少しためらったが、「私は、ミカリンに賛成。スージーにはムリだと思う」と書いた。すると今度は「勝手に決めつけないでよ」と、川田がすぐに書き込んだ。
「続きが楽しみ」と思ったら押して下さい。
2011年5月3日火曜日
俺の名は勘九郎(62)
「談合していることは社内でも極秘にしておけ」
「無駄ですよ。技術部がつくったコストを無視して入札することだってあるんですから。100万で作れるものを200万円で入札したら、仕事は取れません。そんなことが続けば、誰でも談合していると思うでしょう」
「解説されなくても分かっとる。田中は俺が抑えてやるから、あとのヤツには四の五の言わせるな」
「出来るだけやってみます」
猪俣はそう答えたが、やがて談合は公然の秘密になっていった。
初めのうち、談合のシステムは村上製作所の千葉が描いたとおりに進行した。浅野、村上、鳥海の順で一巡目を受注したあとは、累計受注金額の一番少ない会社が次の受注者となるルールで、議論の必要はなかった。ところが7回目となる入札の仕様書を読んだとき、猪俣は首をひねってしまった。山梨県のF市が用意した発注仕様書は、開発要素の多い内容で、標準品のどのタイプにも該当しないものだった。また、合計130基の街灯を一度に整備する大規模プロジェクトで、どの会社にとっても魅力的な案件だった。談合の順番から言えば、それは鳥海ウィンドパワーが受注するはずなのだが、鳥海の技術力では対応が難しいだろうと猪俣は思った。
「続きが楽しみ」と思ったら押して下さい。
「無駄ですよ。技術部がつくったコストを無視して入札することだってあるんですから。100万で作れるものを200万円で入札したら、仕事は取れません。そんなことが続けば、誰でも談合していると思うでしょう」
「解説されなくても分かっとる。田中は俺が抑えてやるから、あとのヤツには四の五の言わせるな」
「出来るだけやってみます」
猪俣はそう答えたが、やがて談合は公然の秘密になっていった。
初めのうち、談合のシステムは村上製作所の千葉が描いたとおりに進行した。浅野、村上、鳥海の順で一巡目を受注したあとは、累計受注金額の一番少ない会社が次の受注者となるルールで、議論の必要はなかった。ところが7回目となる入札の仕様書を読んだとき、猪俣は首をひねってしまった。山梨県のF市が用意した発注仕様書は、開発要素の多い内容で、標準品のどのタイプにも該当しないものだった。また、合計130基の街灯を一度に整備する大規模プロジェクトで、どの会社にとっても魅力的な案件だった。談合の順番から言えば、それは鳥海ウィンドパワーが受注するはずなのだが、鳥海の技術力では対応が難しいだろうと猪俣は思った。
「続きが楽しみ」と思ったら押して下さい。
2011年4月20日水曜日
俺の名は勘九郎(61)
談合慣れした猪俣は、すぐに千葉と鳥海の営業マンである川田に声をかけ、ルールの調整をした。千葉は特殊事情を勘案することに最後まで反対し、結局は猪俣も折れざるを得なかった。係数の確認方法につても、千葉はそれぞれの営業マンが独自のブログを使って意思表示する方法にこだわったが、それには猪俣も川田も反対だった。一枚の紙で管理する代わりに、千葉が立ち上げたブログを使って共通認識を持つことになった。そうして『ミカりん日記』の登場人物に、ランとスージーが加わることになった。猪俣がランで、川田がスージーだ。かつてキャンディーズのファンだった川田によるネーミングだそうだ。
ラン、スージー、ミカりん…、はやく普通のオジサンに戻ってほしい。
千葉は、ミカりん日記を3人で使うことを認めたが、会社のパソコンからはアクセスしないことを条件にした。猪俣も川田もそれを承諾したが、実際に入札が始まれば、すぐになし崩しになってしまうだろうと猪俣はたかをくくっていた。
談合のルールが成立した直後、上野は猪俣を8階の応接室に呼んだ。
「何があっても、俺の名前は絶対に出すな。万が一、お前が逮捕されても、サラリーマンとして、骨は拾ってやる」
「逮捕された社員が、会社にいられますか?」
「懲戒解雇は免れないだろう。だが、ほとぼりが冷めたらグループ会社で雇ってやる。給料も保証する。それに公取は、大企業の摘発で名を上げたいのさ。街路灯メーカーなんか見ちゃいよ」
「ヘタをするつもりはありませんが、世の中が、だいぶ変わってきました。内部告発をする者が出るかもしれません」
「そんなヤツがいるのか?」
「ちょっと危ないのがいるので、様子を見ておきます」
猪俣は、堀田という名前の社員のことを思い浮かべていた。
「続きが楽しみ」と思ったら押して下さい。
ラン、スージー、ミカりん…、はやく普通のオジサンに戻ってほしい。
千葉は、ミカりん日記を3人で使うことを認めたが、会社のパソコンからはアクセスしないことを条件にした。猪俣も川田もそれを承諾したが、実際に入札が始まれば、すぐになし崩しになってしまうだろうと猪俣はたかをくくっていた。
談合のルールが成立した直後、上野は猪俣を8階の応接室に呼んだ。
「何があっても、俺の名前は絶対に出すな。万が一、お前が逮捕されても、サラリーマンとして、骨は拾ってやる」
「逮捕された社員が、会社にいられますか?」
「懲戒解雇は免れないだろう。だが、ほとぼりが冷めたらグループ会社で雇ってやる。給料も保証する。それに公取は、大企業の摘発で名を上げたいのさ。街路灯メーカーなんか見ちゃいよ」
「ヘタをするつもりはありませんが、世の中が、だいぶ変わってきました。内部告発をする者が出るかもしれません」
「そんなヤツがいるのか?」
「ちょっと危ないのがいるので、様子を見ておきます」
猪俣は、堀田という名前の社員のことを思い浮かべていた。
「続きが楽しみ」と思ったら押して下さい。
2011年4月7日木曜日
俺の名は勘九郎(60)
「こんな小さな業界に公取が入るわけねえよ」
上野にそう言われたとき、田中はそんなものかと思って、指示に従った。千葉にリスクを聞かされると、今度は不安になった。万が一、逮捕されるようなことになれば、上野はあっさりと自分を切り捨てるだろう。そう思うと、不安がいや増した。むしろ、上野には千葉が談合を拒否したと報告して、この話を取り下げてしまおうかとさえ考えた。しかし、嘘がばれれば、社長の椅子を失うどころか、会社にいられなくなってしまうだろう。
田中は逡巡したが、結局のところ千葉の案を了解することしかできなかった。
話を終えて、テーブルの伝票を田中が手にとると、千葉はすかさず千円札を田中に渡した。
「領収書はダメですよ」
証拠を残すまいとする千葉の徹底ぶりに舌を巻き、自腹ならもっと安いところでよかったと田中は思ったが、黙って割り勘にすることにした。
田中から報告を受けた上野は、予想通りの反応を示した。特殊事情が勘案されないことにも腹を立てたが、千葉という男のいいなりになっていることが我慢ならなかった。田中に任せておいたら、やられっぱなしになる、上野はそう思って、猪俣を呼ぶことにした。5月になって猪俣がやってきたのは、そういうわけだった。
「続きが楽しみ」と思ったら押して下さい。
上野にそう言われたとき、田中はそんなものかと思って、指示に従った。千葉にリスクを聞かされると、今度は不安になった。万が一、逮捕されるようなことになれば、上野はあっさりと自分を切り捨てるだろう。そう思うと、不安がいや増した。むしろ、上野には千葉が談合を拒否したと報告して、この話を取り下げてしまおうかとさえ考えた。しかし、嘘がばれれば、社長の椅子を失うどころか、会社にいられなくなってしまうだろう。
田中は逡巡したが、結局のところ千葉の案を了解することしかできなかった。
話を終えて、テーブルの伝票を田中が手にとると、千葉はすかさず千円札を田中に渡した。
「領収書はダメですよ」
証拠を残すまいとする千葉の徹底ぶりに舌を巻き、自腹ならもっと安いところでよかったと田中は思ったが、黙って割り勘にすることにした。
田中から報告を受けた上野は、予想通りの反応を示した。特殊事情が勘案されないことにも腹を立てたが、千葉という男のいいなりになっていることが我慢ならなかった。田中に任せておいたら、やられっぱなしになる、上野はそう思って、猪俣を呼ぶことにした。5月になって猪俣がやってきたのは、そういうわけだった。
「続きが楽しみ」と思ったら押して下さい。
2011年3月26日土曜日
俺の名は勘九郎(59)
特殊事情のことより、談合そのものに対する不安の方が、田中の胸では大きくなっていった。
「分かりました。ブログというのは、誰でも作れるのですか?」
「パソコンさえあれば、誰にでもできます。ですが、ブログに書くのは係数だけにして下さい。係数を記載するのは、入札の前日ということにしましょう。受注予定者が、入札の前日にブログを更新する。他の2社は係数を使って、チャンピオンの入札金額を計算して、自社の価格を決めるのです。累計受注金額の管理は各社でお願いします。但し、こんなふうにパソコンで表を作るのはよした方がいい」
千葉は、田中がつくったシミュレーションの表を示して言った。
「分かりました。ですが、一枚の紙で管理しなければ、間違いが起こらないでしょうか」
「単純な足し算ですからね。何度も確認すれば、間違いませんよ。入札の前日に、二つの会社がブログに係数を乗せるようなことがあったら、この談合はやめましょう。累計金額の足し算を間違えたのか、間違えたふりをして、話し合いに持ち込もうとしているかのどちらかということです。私はどんな場合にだって、特殊事情を話し合う気はありません。単純な計算ミスという可能性もあるでしょう。だけど、この足し算を間違うような不注意は許されません。それが出来ない人と心中しようという気にはなれません」
千葉の言葉がすべて正しいように田中は感じた。千葉の要求をすべて飲んだ、と上野に報告すればドヤされることは分かっていたが、田中は談合そのものに対して臆病になっていた。しかし「やっぱり談合はやめましょう」と言えば、殴られんばかりの言葉を浴びせられることも分かっていた。話を反故にできないのなら、千葉の言う通り少しでもリスクを減らすことを考えるしかなかった。千葉のような覚悟が、田中にはこれっぽっちもなかった。
「続きが楽しみ」と思ったら押して下さい。
「分かりました。ブログというのは、誰でも作れるのですか?」
「パソコンさえあれば、誰にでもできます。ですが、ブログに書くのは係数だけにして下さい。係数を記載するのは、入札の前日ということにしましょう。受注予定者が、入札の前日にブログを更新する。他の2社は係数を使って、チャンピオンの入札金額を計算して、自社の価格を決めるのです。累計受注金額の管理は各社でお願いします。但し、こんなふうにパソコンで表を作るのはよした方がいい」
千葉は、田中がつくったシミュレーションの表を示して言った。
「分かりました。ですが、一枚の紙で管理しなければ、間違いが起こらないでしょうか」
「単純な足し算ですからね。何度も確認すれば、間違いませんよ。入札の前日に、二つの会社がブログに係数を乗せるようなことがあったら、この談合はやめましょう。累計金額の足し算を間違えたのか、間違えたふりをして、話し合いに持ち込もうとしているかのどちらかということです。私はどんな場合にだって、特殊事情を話し合う気はありません。単純な計算ミスという可能性もあるでしょう。だけど、この足し算を間違うような不注意は許されません。それが出来ない人と心中しようという気にはなれません」
千葉の言葉がすべて正しいように田中は感じた。千葉の要求をすべて飲んだ、と上野に報告すればドヤされることは分かっていたが、田中は談合そのものに対して臆病になっていた。しかし「やっぱり談合はやめましょう」と言えば、殴られんばかりの言葉を浴びせられることも分かっていた。話を反故にできないのなら、千葉の言う通り少しでもリスクを減らすことを考えるしかなかった。千葉のような覚悟が、田中にはこれっぽっちもなかった。
「続きが楽しみ」と思ったら押して下さい。
2011年3月7日月曜日
俺の名は勘九郎(58)
「2.5が係数ですよ」
「えっ!?」
「それは私がつくったブログです。つくったと言っても、グーグルのテンプレートに文字を入れただけですけどね」
「ミカりんもアキラも架空の人物ということですか?」
「恥ずかしながら、ミカりんというのは、うちの娘のニックネームです。アキラ君というのが、どうもボーイフレンド以上の関係のようでしてね。このブログはうちのパソコンでつくりました。万が一、自宅のパソコンが押収されても、カムフラージュになるでしょう。美香がこのブログの存在を知ったら、たぶん私は殺されますけどね」
千葉はそこで、いたずらっぽく笑った。
「談合って、そこまで慎重にやらなきゃいけないものなのですか」
田中はうなるように言った。
「やるなら、刑務所に入ることも覚悟してやるべきです」
千葉の目は、もう笑っていなかった。
「私の認識が甘かったようです」
田中が不安そうな顔をしていると、千葉が押し込むように続けた。
「この話は、浅野ソーラーの社長である田中さんが持ちかけたのですよ。あなたから電話があったとき、私は考えました。弱肉強食の世の中がいいのか、談合で安定する世の中がいいのか。都合のいい理屈に聞こえるかもしれませんけれど、自己正当化のために言っているわけではありません。談合で逮捕された社員を会社が守ってくれる時代じゃないですからね。懲戒解雇で、退職金も払われないリスクを考えたら、やってられませんよ。それでも勝ち負けだけの市場原理がすべてじゃないように私は思うのです。だから証拠が残りにくい方法を必死で考えました。特殊事情を話しあうために集まったり、携帯でやりとりするのは、まっぴら御免です」
「続きが楽しみ」と思ったら押して下さい。
「えっ!?」
「それは私がつくったブログです。つくったと言っても、グーグルのテンプレートに文字を入れただけですけどね」
「ミカりんもアキラも架空の人物ということですか?」
「恥ずかしながら、ミカりんというのは、うちの娘のニックネームです。アキラ君というのが、どうもボーイフレンド以上の関係のようでしてね。このブログはうちのパソコンでつくりました。万が一、自宅のパソコンが押収されても、カムフラージュになるでしょう。美香がこのブログの存在を知ったら、たぶん私は殺されますけどね」
千葉はそこで、いたずらっぽく笑った。
「談合って、そこまで慎重にやらなきゃいけないものなのですか」
田中はうなるように言った。
「やるなら、刑務所に入ることも覚悟してやるべきです」
千葉の目は、もう笑っていなかった。
「私の認識が甘かったようです」
田中が不安そうな顔をしていると、千葉が押し込むように続けた。
「この話は、浅野ソーラーの社長である田中さんが持ちかけたのですよ。あなたから電話があったとき、私は考えました。弱肉強食の世の中がいいのか、談合で安定する世の中がいいのか。都合のいい理屈に聞こえるかもしれませんけれど、自己正当化のために言っているわけではありません。談合で逮捕された社員を会社が守ってくれる時代じゃないですからね。懲戒解雇で、退職金も払われないリスクを考えたら、やってられませんよ。それでも勝ち負けだけの市場原理がすべてじゃないように私は思うのです。だから証拠が残りにくい方法を必死で考えました。特殊事情を話しあうために集まったり、携帯でやりとりするのは、まっぴら御免です」
「続きが楽しみ」と思ったら押して下さい。
登録:
投稿 (Atom)