2008年11月27日木曜日

言っていい「人」と悪い「人」がいる

“「常識欠けた医者が多い」は患者の常識”週刊新潮(12月4日号)の見出しにこうあります。麻生首相発言を受けてのテーマですね。首相の発言としては極めて不適切な言葉も、週刊誌の見出しとしては問題のないところにマスコミの妙があります。非常識な医者=不適切な医療行為を行う医者ではないかもしれませんが、一般的な感覚としては医師には常識人であってもらいたいところです。
どんな業界でも、良識のある人もいれば、非常識な人もいるものです。絶対数で何人の非常識な医師を知っていても、医師に非常識な人が多いか少ないかを断定することはできません。誰が見ても「常識のない人」もたまにいますが、「あいつには常識がない」と言う場合、主観的な判断によるケースが多々あります。
「あなたは非常識な人ですか?」とアンケート調査されて、「ハイ」と答える人は少ないと思うので「調査の結果、医者と政治家では〇〇の方が、非常識な人の割合が多いと判明しました」などという報道はありません。
奥田英朗氏の小説に登場する伊良部先生のような突飛な医者が本当にいたら、ちょっと怖いですね。

2008年11月23日日曜日

大麻汚染は大学生の間で拡大しているのか

11月22日の朝日新聞朝刊に「大麻摘発 最悪ペース 目立つ若者」とあります。「昨年検挙された30歳未満の若者は、1570人で10年前の2.3倍。・・・・今年(10月末現在)に入って大学生は74人が検挙され、昨年同期より10人多い。 早稲田大、慶応義塾大、法政大、東京理科大・・・・」と記事は続きます。

テレビや新聞の報道から、大学生の間に大麻汚染が広がっているような印象を受けます。しかし先の記事から昨年検挙された若者(30歳未満)に占める大学生の比率を類推すると、5%以下に過ぎません。昨年の10月末までに検挙された大学生の総数は64人、1か月あたり、6.4人が検挙されている計算なので、年間77人が検挙されたとします。この人数を1570人で割ると4.9%。
一方、30歳未満の若者総数のうち、大学生はどれくらいの割合でいるのでしょうか?平成17年度の国勢調査の数字を利用すると、10歳から29歳までの人口総数は約2600万人となります。このうち、18歳から22歳までの人口総数は、520万人。平成20年の大学進学率が約55%なので、約290万人が大学生と計算します。したがって、10歳から29歳までの若者に占める大学生の比率は、11%ということになります。1570人の若者が検挙されたならば、そのうちの170人くらいが大学生であったとしてもおかしくありません。10歳の小学生や13歳の中学生が大麻で検挙された話は聞かないので、検挙された若者を15歳から29歳までとすれば、昨年230人くらいの大学生が検挙されても不思議ではない数字になります。
ところが、実際に検挙された大学生は80人以下(推定)。実態としては、若者全体に広がっている現実をとらえて、取締の対策を考えるべきなのでしょう。
たしかに、早大生や慶応大生が「逮捕」されると、ニュースとしてのインパクトがあります。雑誌の特集なら、「一流大学生が大麻所持」と「若者に拡大する大麻汚染」では、販売実績に差がでるのかもしれません。また、「有名大学生逮捕」には一罰百戒的な効果もあるのでしょう。
それでも、一律的な報道に疑問を感じたときは、検証する姿勢を持ちたいものです。

2008年11月22日土曜日

WBC出場辞退と縮小均衡

WBCの代表選手に「中日の選手は全員が出場を辞退した」と報道されています。選手個人より球団への批判が出ることを想定した上での、「出場辞退」だと思います。

極端な妄想をしてみましょう。

2009年4月、万全の状態でシーズンに臨んだ中日は、開幕ダッシュに成功し大きな貯金をつくります。
レギュラーシーズンの途中で失速するも、4月の貯金がものをいい、10月のデッドヒートを制してペナントレースで優勝。クライマックスシリーズを勝ち上がり、日本一を達成。観客動員も大幅に増加し、球団の利益は伸びます。シーズン当初の批判は忘れられ、球団幹部はほくそ笑みます。
2012年のWBCでは、09年の中日の成功を思い出した各球団が、WBCへの選手派遣を辞退します。プロ野球界全体の繁栄を忘れ各球団のエゴが通る結果に、多くのファンが離れていきます。
それでも、プロ野球を愛するファンはたくさんいます。コアなファンだけが残り、12球団の半分が淘汰されますが、残った6球団はそれなりの規模でプロ野球を維持していきます。縮小均衡により適正規模になったプロ野球は、「国民的行事」と言われるような盛り上がりを見せることはありませんが、マニアをがっしりつかんだ堅実なビジネスとして成功します。

妄想にすぎませんが、「WBC出場辞退」は
「野球って楽しそうなスポーツだなー」と感じる子供より、
「サッカーのワールドカップにいつか出てみたいなー」
と思う子供の方が増えそうなニュースだと感じました。

2008年11月19日水曜日

会長とチェアマンとキャプテン

サッカー界の2トップの連携に乱れがあるようです。日本サッカー協会の犬飼会長が、「2010年からJリーグの秋開幕」を提案すれば、それを検討したJリーグの鬼武チェアマンが「2010年からはムリ」と回答しました。「ナビスコカップは23歳以下とオーバーエイジ枠の選手で」と犬飼会長が言えば、鬼武チェアマンは、「JリーグのことはJで決める」と発言したそうです。それに対し、「Jはサッカー協会傘下の一組織」と犬飼会長。
“川淵キャプテン”の時代なら考えられない対立でしょう。巨大組織では、長く君臨したカリスマ性のあるトップが退任したあとに、次世代の覇権をめぐる権力闘争がおこりやすいものです。
カリスマトップが名君の場合、組織は大きな進歩を遂げます。一方、暴君にカリスマ性が備わってしまうと組織は大きく歪んでしまいます。「鈴をつける人がいない」状態です。
Jリーグの秋開幕やナビスコカップ出場選手の年齢制限は重要な検討課題なのかもしれません。しかし、下部組織とはいえJリーグチェアマンとの事前協議があってしかるべきでしょう。強権発動は、トップダウン型の指導力の発揮が必要なケースとそうでないケースを判断して、実行すべきものです。

2008年11月18日火曜日

ある努力

「世の中に天才などいない」と言いきってしまうこともできる。そして「すべての人間は天才である」ということもできる。人はそれぞれ、違った才能を持って生まれている。それが、「天に与えられた才」である。
「才能」つまり「物事をうまくなしとげる能力」を人は誰でも持っている。一つの分野を特定して、能力のマグニチュードを計測できるなら、当然そこには優劣がある。数字の暗記に適した能力、外国語の発音を自然に聞き取る能力、正面から飛んでくるスピードボールを打ち返す能力。さまざまな能力がある。その局面だけをみて、「天才は違うね」と片付けてしまうことは、たやすく、そして切ない。
「石ころを入れたカゴを背負って毎日歩き続ける能力」この能力の偉大さを計るすべは誰もしらない。未来への希望がそこにあることを知ったものが、それを真似ることは可能だ。

(60歳のころ、脳卒中で倒れたK氏は、半身不随の状態からやがて立つことが可能になりました。石ころを入れたカゴを背負うことで体のバランスをとり、歩行のリハビリをしました。リハビリの結果、90歳になる現在も、グランドゴルフを楽しめるほど元気になりました。石を背負って、毎日数キロの道を無理して歩かせる家族の厳しさと優しさ。リハビリの様子を取材して記事を作成予定です)

2008年11月7日金曜日

アフリカ系(黒人) ~ニュースの言葉がわからん~

6日(木)の朝日新聞・朝刊に「アフリカ系(黒人)の大統領を選んだ歴史的な選挙となった」とありました。7日の朝刊には、「無数のアフリカ系(黒人)有権者が、泣いた」とあります。すぐ後に「80年代に大統領選指名候補争いに出た黒人指導者、ジェシー・ジャクソン氏のほおにも涙が伝った」とあります。“アフリカ系(黒人)” と “黒人”の使い分けがわかりません。オバマ氏はアフリカ系(黒人)であるけれど、ジェシー・ジャクソン氏は、ミクロネシア系かアフリカ系かルーツは不明ながら「黒人」ということでしょうか?だとすると、「無数のアフリカ系(黒人)有権者が、泣いた」は、「アフリカ系の黒人有権者は泣いたけれど、アフリカ系以外の黒人有権者は泣いていなかった」という意味が込められているのでしょうか?
6日の朝日新聞夕刊には、F1で最年少王者になったルイス・ハミルトン選手の記事があります。「マッサ(ブラジル、フェラーリ)をかわして、シリーズ初の黒人王者にもなった」とあります。この場合もルーツは不明だけど、とにかく「初の黒人王者」を強調したいのでしょうか。
一方、神奈川新聞では、オバマ氏は「初の黒人大統領」であり、ハミルトン選手は「初の黒人チャンピオン」と記載されています。この方が、読んでいて引っかかりがありません。
“アフリカ系(黒人)”の場合、カッコにも引っかかります。カッコを外して、「アフリカ系黒人」ではだめなのでしょうか?
今度、朝日新聞に聞いていみよう。

2008年11月2日日曜日

プロ野球のFAとサッカー王国ブラジル

国内の球団からドラフトでの指名がなかった新日本石油ENEOSの田沢選手は、「よかった。感謝しています」とコメントしました。活躍の舞台をどこに求めるのかは、本人の自由です。メジャーリーグに行ってしまうと、田沢選手のピッチングを“生”で見ることが出来なくなってしまうので個人的には残念です。すべてのアマチュア選手が日本のドラフトを拒否すると、日本のプロ野球は消滅してしまいます。それは大袈裟ですが、有力な新人選手が日本のプロ野球を経ずにメジャー入りしてしまうことを心配する気持ちもわかります。
しかし、「最初からメジャーに行った人が日本のプロ野球に入りたくなっても、僕たちに申し込んでから2~3年経たないと入れてあげませんよ」という制度を決定しようとしている日本プロ野球界には、がっかりです。プロ野球が魅力的であり続けることを一生懸命に考えた結果なのに、かえってファンがそっぽを向くルールになってしまいそうです。
FA取得までの期間を短縮し、油の乗りきった時期に海外へも挑戦できる制度を作ってはどうでしょうか?旬の選手がメジャーに流出してしまうのは惜しいことも確かですが、抜けた穴を埋めるべく若手に台頭のチャンスも巡ってきます。松井稼頭央選手がメジャーに移籍しなければ、西武・中島選手の活躍は別な形になっていたでしょう。
サッカー王国のブラジルは、国内のリーグで活躍した選手がどんどんヨーロッパのチームに移籍していきます。その流れが、スター選手を次々に輩出する要因のひとつではないでしょうか。
「日本人メジャーリーガーと日本プロ野球の選手が結集してWBCのような大会に出てくると、圧倒的な強さを誇る」そんな野球王国ニッポンなら、プロ野球界の衰退を危惧する必要はないでしょう。