2009年11月2日月曜日

俺の名は勘九郎(2)

《珍しいわね、あんたみたいなタイプに部屋の中で会うなんて。あたしの名前は、キト。しばらくお世話になるみたいね。よろしく。で、あんたの名前は?》
飼い主と違ってキジトラの方は、少しは礼儀を知っているようだ。キトの頭をなでながら、飼い主の女が俺の顔を覗きこむようにして言った。
「ネコとカラスって相性いいの?」
いいわけがなかろう。やっぱり山崎の連れだ。飼いネコでも鳥を食うやつがいる。狩りを楽しむだけで食うことをしない、キャッチアンドリリース派のネコもいる。まあ、俺たちカラスは、ネコに食われるようなドジは踏まない。が、それでもネコとひとつ屋根の下に暮らすのは気持ちのいいもんじゃない。おい山崎、なんとかしろ、と言ってみたが、人間にはどうせカアとしか聞こえていないのだ。かわいそうに。人間には言葉があるというが、そんなものは嘘の塊だ。人間以外の存在は、いわゆるテレパシーで意思を交換している。だから、キトの言うことを俺は理解できるわけだ。俺はキトに答えた。
《俺の名は、堪九郎。この鳥かごをねぐらにして2年になる。この部屋のベランダに居つくようになったのは3年前で、山崎との付き合いはもっと古い。昼間は勝手にやっているが、部屋にいるときは、カゴの中だ。お前さんとかち合うつもりはないから、せいぜいよろしく》
《人間に飼われるカラスなんて、初めて見たわ。ところで、あんたいつからマタげるようになったの?》
《そんなものは、生まれたときからだ》



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