猫の視線はセックスの邪魔にはならないらしく、山崎と雪乃は3日に一度は体を重ね合わせていた。170cmの山崎より少しだけ上背のある雪乃は、ひょろりと痩せていたが、胸と尻の辺りだけは肉づきのいい女だった。整った目鼻立ちを見るにつけ、顎の骨があと1センチ短ければ、2流のテレビタレントくらいにはなれるだろうと俺はいつも思うのだが、山崎は、彼女の容姿に十分満足していたようだ。雪乃はシフト制のアルバイトをしていると言っていたが、勤務時間はかなり不規則だった。一度俺はキトに、雪乃がどんな女なのか聞いてみたが、キトは、答えたくないようだった。
《キトさん、キトさん、キトさーん!》
ベンチに着く前から、コタローは、3度もキトの名を叫んだ。コタローがその日公園を訪れることは知らせてあったので、キトは別段驚いた風もなかった。薄くまぶたを持ち上げてコタローの姿を認めると、危うくまた眠り込みそうになった。
《それはないぜ、キト》
俺が言うと、キトは少し面倒くさそうに、久しぶりね、とコタローの方を見て、念を送った。
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