2009年6月22日月曜日

見られて美しくなる

巨人の大田選手が、代打で一軍デビューを果たしました。「三球三振」がニュースになるとは、さすがジャイアンツ期待のルーキーです。高校通算65本のホームランを記録し、昨年のドラフト会議では、巨人のほかにソフトバンクも1位で指名した逸材です。それでもソフトバンクに入団していたら、ニュースとしてこれほど大きく扱われていないでしょう。「人気凋落」と言われても、巨人の選手であることにニュースバリューがあるわけです。

少し前に、バン・クライバーン国際ピアノ・コンクールで全盲の辻井伸行さんが日本人初の優勝を成し遂げました。ハンディキャップを克服しピアノの才能を開花させた努力が報われたことに、素直に「おめでとう」の気持ちが湧きました。その後の報道では、「全盲であることばかり強調せず、辻井さんのピアニストとしての素晴らしさをもっと伝えてほしい」という声も紹介されています。こう主張する人の気持ちもよく分かります。しかし、事実が淡々と報告された最後に「ちなみに辻井さんは全盲である」と記載する新聞記事では読みとばされてしまうかもしれません。
「目が見えないのに大変だったんだろうな。どんな努力があったのだろう?」と思う人が多いから、ニュースとして大きく取り上げられるのでしょう。

今日の朝日新聞の朝刊では、JALで唯一の女性パイロット・立川 円さんが紹介されていました。約600人のJALのパイロットの中で、同社史上ただ一人の女性パイロットだそうです。
「JALにパイロットがいます」では、まったくニュースになりません。
「JALに、たった一人だけ女性のパイロットがいます」と書いてあると、どんな人なのだろう?という興味がわきます。
「男性社会に切り込んでパイロットの座を勝ち取るまでにはどんな苦労があったのだろうか?」と書くと知的好奇心から記事を読み進めたように見えますが、実際はジェット機を背景にした制服姿の写真を見て「結構かわいいじゃん」というオヤジ目線が記事を読ませます。(主観ですが)

大田選手も辻井さんも立川さんも、プロとして一流の実力があることは間違いないのでしょう。今は「巨人の」、「盲目の」、「女性の」という枕ことばがつくから注目されていることも事実だと思いますが、超一流は、注目されることでさらに自分を成長させていきます。
俳優が、年を重ねてもカッコよかったり、美しかったりするのは、見られて成長する典型なのかもしれません。

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